育児休業は、多くの方が子育てをしながら仕事に復帰するために活用する制度です。しかし、育児休業の延長可否や条件、認められないケースについて詳細に知りたい方も多いのではないでしょうか。
本記事は、育休の延長可否や延長する場合の事例と条件、認められないケースについて解説します。また、よくある質問も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
育休は延長できるの?
はじめに、育休の概要や条件について解説します。
- 育休(育児休業)の概要
- 育休延長の条件
- 育休を延長した人の割合
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
育休(育児休業)の概要
育児休業は、出産後の親が子どもの育児に専念できるように、法律で保障された制度です。基本的には産後8週間の産休が終了した翌日から取得が可能で、子どもが1歳になる前日まで利用できます。
また、保育所への入所が難しいといった理由がある場合は、1歳6ヶ月や2歳の誕生日の前日まで延長が認められるケースがあります。この制度は、雇用契約が一定期間継続する見込みがある従業員に適用され、正規雇用者だけでなく、パートタイムや派遣社員にも適用される点が特徴です。
なお、育児休業と育児休暇の違いについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
関連記事:育児休暇と育児休業の違いとは?育児休業の対象者と期間や申請に必要な書類を詳しくご紹介! – コカラ
育休延長の条件
育児休業は、原則として子どもが1歳に達するまで取得可能ですが、特定の状況下においては延長が認められています。たとえば、保育所が見つからない場合や、親が病気や事故などで子どもの養育が困難になった場合です。
また、婚姻関係の解消による別居や新たな妊娠・出産も延長の対象となる場合があります。延長は最初1歳6ヶ月まで申請可能で、その後も状況が変わらなければ再申請により最長で2歳の誕生日前日まで延長できます。
ただし、この措置は例外的なものであり、1歳時点で一括して2歳までの延長の申請は認められていません。さらに、延長の条件には、休業終了後に職場復帰の意思確認が求められます。
育休を延長した人の割合
厚生労働省の調査によると、育児休業の延長が実際に利用されている割合には性別による大きな差があります。令和3年度から令和4年度の1年間で、育休を取得し復職した労働者がいる事業所のうち、保育所の利用が困難で育休延長が発生した割合は約32.9%でした。
その中で、子どもが1歳時点で延長したケースを見ると、女性のみが利用している割合が29.3%であるのに対し、男性のみが利用している事例は見られません。また、1歳6ヶ月時点での延長利用も女性のみが12.6%を占め、男性の利用は報告されていない結果です。
この結果は、男性の育休延長利用が非常に少ない現状を示しており、制度活用における性別格差の課題を浮き彫りにしています。
参考:「令和3年度雇用均等基本調査」結果を公表します|厚生労働省
育休を延長する場合の事例と条件
次に、育休を延長する場合の事例と条件について解説します。
- 1歳6ヶ月になるまで延長する場合
- 2歳の誕生日前日まで延長する場合
- パパ・ママ育休プラス制度を利用する場合
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
1歳6ヶ月になるまで延長する場合
育児休業の延長は、一定の条件を満たす場合に認められます。まず、子どもが1歳の誕生日を迎える前日に、本人または配偶者の育休取得が前提となります。
そのうえで、次のいずれかの事情がある場合に延長が可能です。1つ目は、保育所への入所を希望しているものの、定員不足などの理由で入所できないケースです。
2つ目は、子どもの養育を予定していた配偶者が、死亡、けが、病気、または離婚などにより、育児が困難な状況にある場合となります。このような条件を確認し、必要に応じて適切な手続きを行うことが重要です。
2歳の誕生日前日まで延長する場合
育児休業を1歳6ヶ月まで延長するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。まず、子どもが1歳6ヶ月を迎える日に、本人またはその配偶者の育児休業を取得している事実が必要です。
さらに、次のいずれかの状況に該当する場合に延長が認められます。1つ目は、保育所への入所を希望しているものの、定員などの理由で入所ができない場合です。
2つ目は、子どもの養育を予定していた配偶者が、死亡、けが、病気、離婚などの事情で育児が困難になった場合です。また、育休期間中は土日や祝日を含む全ての日数が計算対象となります。
パパ・ママ育休プラス制度を利用する場合
パパ・ママ育休プラス制度を利用する場合は、特定の条件を満たす必要があります。まず、夫婦両方の育休取得が前提です。
また、配偶者が子どもの1歳の誕生日の前日まで育休を取得している場合に条件を満たします。さらに、本人が育休を開始する予定日は、子どもの1歳の誕生日より前でなければなりません。
加えて、本人の育休開始予定日が、配偶者の育休開始日以降でなければなりません。これらの条件を満たすと、育休制度を円滑に利用できます。
育休の延長が認められないケース
育児休業の延長が認められないケースもあるため、注意が必要です。たとえば、延長申請に必要な書類を提出できなかった場合は、手続きが進められず延長が認められません。
申請時には、延長の必要性を示す証明書類を必ず添付する必要があります。さらに、保育所に入園できない場合でも、特定の状況下では延長が却下されるケースがあります。
たとえば、無認可保育所への入所申込や、保育所の入園申込日が子どもの1歳の誕生日以降の場合や入園希望日が誕生日の翌日以降である場合などが該当です。また、市区町村から年度途中での入園が難しい旨の説明を受けながら、入園申込を行わなかった場合も同様です。
育休延長でよくある3つの質問
最後に、育休延長に関してよくある質問をご紹介します。
- 法改正による審査の厳格化の概要とは?
- 育休を延長すると手当(給付金)はどうなる?
- 育休の延長に必要な確認書類は?
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
質問1.法改正による審査の厳格化の概要とは?
令和7(2025)年4月から、育児休業給付金の受給期間延長手続きや育休の延長において、保育所等への入所申込に関する要件が見直され、審査が厳格化されます。
従来は、市区町村が発行する入所保留通知書の提出が主な確認手段とされていましたが、今後は申請が「速やかな職場復帰を目的としたもの」という内容を証明する必要があります。
この変更は、育休延長を目的とした形式的な申請や、保育所内定後のキャンセルによる行政の負担軽減を目的とした取り組みです。ハローワークでは、入所保留通知書だけでなく、本人の申告やその他の資料を基に審査が行われ、延長が適切かどうか判断されるようになります。
質問2.育休を延長すると手当(給付金)はどうなる?
育児休業中には「育児休業給付金」が支給され、延長期間中も通常の支給額と同じ条件が適用されます。給付金の金額は、育休開始からの日数に応じて計算され、180日までは「利用開始前の給与 × 支給日数 × 67%」、180日以降は「利用開始前の給与 × 支給日数 × 50%」となります。
この仕組みは、育児休業の経済的な負担軽減を目的としており、延長期間においても同じ基準で支給されるため安心です。また、今後は給付率が80%に引き上げられる案も検討されており、さらなる支援拡充が期待されています。
育児休業を計画する際は、給付金の支給条件や計算方法を事前に確認し、家計への影響を十分に考慮する必要があります。
なお、育児休業給付金がいつ受け取れるのかについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
関連記事:育児休業給付金はいつ受け取れる?受け取る条件や支給額、手続きの方法まで詳しくご紹介! – コカラ
質問3.育休の延長に必要な確認書類は?
育児休業の延長に伴い育児休業給付金を延長して受け取るには、以下の書類をハローワークに提出する必要があります。提出が求められる書類は次の3つです。
- 育児休業給付金支給申請書
- 賃金台帳、労働者名簿、出勤簿など、賃金支払い状況を証明する書類
- 延長理由に基づく確認書類
延長理由に基づく確認書類は、育休の延長理由に応じたものが必要です。たとえば、保育所が見つからない場合は市町村が発行する証明書が必要となります。
また、養育予定者が死亡した場合は住民票の写しや母子健康手帳、病気やけがで育児が困難な場合は医師の診断書が必要となります。他にも離婚などで別居している場合や新たな妊娠・出産の場合、それぞれ対応する書類を揃える必要があります。
まとめ
本記事は、育休の延長可否や延長する場合の事例と条件、認められないケースについて解説しました。
育児休業の取得期間は、原則として子どもが1歳に達するまでとなっています。しかし、特定の条件を満たす場合、1歳6ヶ月または2歳の誕生日前日まで延長が可能です。
ただし、育児休業の延長は例外的な措置であるため、認められない場合もあります。このため、育休を延長できる事例や条件を正しく理解しておきましょう。
なお、次のページでは、育休中に2人目を妊娠した場合の育休や給付金について解説しています。こちらもぜひ参考にしてみてください。
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