癇癪(かんしゃく)とは、強い感情が抑えられなくなり、泣き叫んだり物に当たったりする状態を指します。幼児期の子どもや感情のコントロールが難しい状況で見られる場合が多いため、原因や対処法を知ることが大切です。
本記事では、癇癪(かんしゃく)の概要や主な原因、対処法と接し方のポイントについて詳しく解説しています。また、よくある質問も紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
癇癪(かんしゃく)とは?
癇癪(かんしゃく)は、子どもが感情を爆発させる行動のひとつであり、幼児期から児童期にかけて見られるケースが多いです。癇癪の特徴としては、突然の泣き叫びや暴れる行動、物を投げるなどの行為が挙げられます。
これらは、子どもが自分の感情や要求をうまく表現できない場合に起こりやすいとされています。特に幼い子どもにとっては、自分の意志を伝える手段として癇癪が習慣化してしまう場合も少なくありません。
また、癇癪が長引く場合や、自傷や他害行動を伴う場合には、保護者にとって大きな悩みとなります。このような状況になる場合には、子どもの感情の理解と適切な対応が重要になります。
癇癪(かんしゃく)の主な原因
最初に、癇癪(かんしゃく)の主な原因について解説します。
- 生理的欲求を満たすため
- 自分の要求を伝えるため
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
生理的欲求を満たすため
癇癪は、子どもが自身の不快感や欲求を効果的に伝えられない場合に起こる現象です。幼い子どもたちは、空腹や疲れ、不快感といった基本的なニーズを満たすために泣く場合がありますが、これが強い感情を伴う場合、癇癪として現れるケースがあります。
特に乳幼児期には、まだ言語でのコミュニケーションが十分に発達していないため、泣くといった身体的な反応が主な意思表示の手段となります。このため、癇癪を理解した適切な対応が、子どもの健やかな成長には欠かせません。
自分の要求を伝えるため
子どもは成長に伴い、他者との関わり方や自己表現の方法を少しずつ学んでいくのです。1歳ごろには、周囲の顔を識別し、知らない人に対して警戒心を示すようになる場合があります。
この時期、子どもは親しい人とのつながりを強く意識し始め、2歳ごろには、自分の思いを伝えたいという欲求が芽生え、自立心も高まります。「自分でしたい」という感情が強くなり、意思を伝えられない場面では癇癪を起こすケースも少なくありません。
5歳くらいになると、言葉を通じて自分の意見や気持ちを表現する力が発達し、癇癪が減少していきます。言葉が未発達な段階での癇癪は、子どもにとって重要なコミュニケーション手段であると理解しましょう。
なお、イヤイヤ期のピークについてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
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癇癪(かんしゃく)を起こした場合の対処法は3つ
次に、癇癪(かんしゃく)を起こした場合の対処法についてご紹介します。
- 子どもの安全を確保する
- 子どもが落ち着くのを待つ
- 子どもが落ち着いたら褒める
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
1.子どもの安全を確保する
癇癪が始まった際には、まず周囲の環境を整え、子どもの安全を最優先に考えてください。危険を伴う可能性がある硬い物や鋭利な物は、すぐに手の届かない場所へ移動させましょう。
もし、子どもが頭を打ち付けるような行動をとる場合には、壁や床との間に柔らかいクッションや布を挟むなどの対応が効果的です。これにより、怪我のリスクを最小限に抑えられます。
2.子どもが落ち着くのを待つ
癇癪が起きたときは、まず安全を確保したうえで、子どもが自然に気持ちを落ち着けられるように配慮することが大切です。過剰に話しかけたり注意を向けすぎたりすると、かえって子どもの興奮を助長する場合があります。
そのため、子どもの様子を見ながら、干渉を最小限にとどめるのが効果的です。家庭内であればそっと見守る、お店や公共の場では静かな場所に移動するなど、環境を整えて落ち着く時間を与えるのが良い対処法といえます。
3.子どもが落ち着いたら褒める
子どもが癇癪から落ち着きを取り戻したら、その瞬間を逃さず具体的に褒めることが大切です。「よく自分で落ち着けたね」「静かにできたね」といった言葉で、具体的に何が良かったのかを伝えると、子どもは自分の行動に自信を持ち、安心感を覚えます。
また、こうした褒め方は、癇癪以外の方法で気持ちを整理する方法があることを学ぶきっかけにもなります。癇癪の対応では、叱責や欲求をすぐに満たす行動は避け、冷静かつ前向きなコミュニケーションを意識しましょう。
癇癪(かんしゃく)を起こしにくい接し方のポイントは3つ
次に、癇癪(かんしゃく)を起こしにくい接し方のポイントをご紹介します。
- 見通しを立ててあげる
- 気持ちを切り替える方法を決める
- 言葉で伝える練習をする
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
1.見通しを立ててあげる
子どもにとって突然の予定変更や遊びの中断は、大きなストレスとなります。そのため、次の行動を事前に予告し、心の準備をする時間を与えるのが重要です。
「あと5分遊んだら片付けようね」や「次は何をするか一緒に決めようか」などの声かけが効果的です。また、子どもが理解しやすいように、視覚的な工夫を取り入れるのも良い方法といえます。
時計のイラストや写真付きのスケジュール、タイマーを使うと、次の行動が明確にわかり、気持ちの切り替えがスムーズになります。
2.気持ちを切り替える方法を決める
子どもの気持ちを切り替える方法を事前に話し合い、練習しておくのも、癇癪を予防する効果的なアプローチです。たとえば、「イライラしたら深呼吸をしてみる」「静かな場所で休む」「好きな音楽を聴く」など、子どもが取り組みやすい方法を一緒に考えるのが大切です。
また、具体的な状況に合わせて対処法を決めておくのも有効です。たとえば、「お友だちとおもちゃの取り合いになったら、交代で使う約束をする」といった対策をあらかじめ共有しておくと、実際の場面でスムーズに実行できる可能性が高まります。
穏やかな時に話し合いを重ね、成功体験を褒めると、自己調整力を育んでいけます。
3.言葉で伝える練習をする
言葉で自分の気持ちや欲求を表現する練習は、癇癪の予防と子どもの成長において重要です。たとえば、「疲れた」「おなかがすいた」「遊びたい」など、よく使うフレーズをカードにしておき、子どもが気持ちを言葉で表現するきっかけを作る方法があります。
自分の気持ちのカードが選べたときには「ありがとう、わかりやすく伝えられたね」と褒めると、伝える行為へのポジティブな感覚を育てます。また、表現が上手くできた際には、シールを貼るなどの視覚的なご褒美を用意すると、子どもに達成感を持たせられる効果が高いです。
さらに、環境の調整も重要です。過剰な刺激を避けるために、静かな空間を作るなど、子どもが落ち着けるような環境を整えると、癇癪の発生を予防できます。
癇癪(かんしゃく)でよくある3つの質問
最後に、癇癪(かんしゃく)についてよくある質問をご紹介します。
- 癇癪(かんしゃく)と発達障害の違いは?
- 癇癪(かんしゃく)を起こした場合にNGな行動は?
- 子どもの癇癪(かんしゃく)に関する相談先は?
それぞれの内容について詳しくみていきましょう。
質問1.癇癪(かんしゃく)と発達障害の違いは?
癇癪が頻繁に見られる場合でも、それが必ずしも発達障害を意味するわけではありません。癇癪は、不快な状況を変えようとする子どものサインであり、一般的な発達の中でも見られる行動です。
ただし、発達障害を持つ子どもの癇癪には、その特性が影響しているケースが多いです。たとえば、感覚過敏や特定のものへのこだわり、自分の気持ちをうまく伝えられない時や相手の意図との調整が難しい場合に、感情をコントロールするのが苦手なため、癇癪のきっかけとなるケースがあります。
質問2.癇癪(かんしゃく)を起こした場合にNGな行動は?
癇癪への対応は、子どもの行動や感情に大きな影響を与えるため慎重さが求められます。感情的になって怒ったり叱責したりすると、子どもをさらに興奮させる可能性があるため避けるべきです。
また、癇癪を抑えるためにすぐに欲求を満たす行動、たとえばお菓子を与えるなどの対応を取ると、子どもは「癇癪を起こせば望みが叶う」と誤って学習してしまいます。こうした一時的な解決策は、問題の根本にアプローチしていないため、長期的には好ましくありません。
まずは冷静に状況を見守り、子どもの感情が落ち着いた後に適切にコミュニケーションを図ることが大切です。
質問3.子どもの癇癪(かんしゃく)に関する相談先は?
子どもの癇癪が頻繁に起こったり、対応に困難を感じる場合には、家庭だけで抱え込まず、専門家や支援機関に相談しましょう。子育て支援センターは、乳幼児と保護者が交流できる場であり、育児に関する不安や悩みの相談も受け付けています。
また、発達障害の特性が癇癪に関連している場合には、発達障害者支援センターが役立ちます。このセンターでは、専門的なアドバイスや必要な福祉サービス、医療機関の紹介を行っているのです。
さらに、児童発達支援センターでは、子どものスキル向上を目的とした訓練が提供されます。相談先を適切に選び、早めに支援を受けると、子どもと保護者がより過ごしやすい環境を整えられます。
まとめ
本記事では、癇癪(かんしゃく)の概要や主な原因、対処法と接し方のポイントを詳しく解説しました。
癇癪は、特に幼児期の子どもが感情を上手にコントロールできないときに見られる行動で、自己表現や欲求不満、環境の変化が原因となるケースが多いです。
癇癪を起こした際は対応に苦慮する場面も多いと思いますが、子どもにとっては重要なコミュニケーション手段ともいえます。癇癪を起こした際には、冷静に見守りつつ、子どもの気持ちを受け止めてあげましょう。
なお、次のページでは、イヤイヤ期の子どもへの接し方のコツや注意すべきポイントを解説しています。こちらもぜひ参考にしてみてください。
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