男性の育児参加を推進するため、国が主導する育休取得の義務化が進められています。しかし、職場の人手不足やキャリアへの影響などを懸念し、育休を取りにくいと感じている方は珍しくありません。
本記事では、男性の育児休暇取得に関する現状や育児休暇制度の概要、取得するためのポイントをご紹介します。また、よくある質問も解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
男性の育児休暇取得に関する現状とは?
男性の育児参加を推進するため、国が主導する育休取得の義務化が進められています。これは、育児に積極的に関わりたいと考える男性にとっては、追い風となる施策です。
しかし、このような義務化が必要とされるのには、男性が育児休暇を取得するのが一般的ではない背景があります。このように、社会的な障壁が存在する現状があるため、性別を超えた育児参加が当たり前になる社会への推進が求められています。
育休休暇の取得率は低い
厚生労働省が公表した「令和5年度雇用均等基本調査」によれば、男性の育児休業取得率は30%となっています。これは、平成17年以前の1%未満という状況と比べれば大きく改善された数字です。
しかし、女性の取得率が83.8%であるため、依然として男性の取得率は低いままです。育児休業制度を導入している事業所は大半を占めているものの、男性が積極的にこの制度を利用していない問題が課題となっています。
育休休暇を取得したい男性は増加している
公益財団法人日本生産性本部の「2017年度 新入社員 秋の意識調査」によると、男性新入社員の約8割が「子どもが生まれた際には育児休暇を取得したい」と回答しています。
しかし、現実には「業務が忙しい」「職場の雰囲気が取得を許さない」「企業が男性の育児休暇を想定していない」といった理由で、育休を希望しても取得できない状況が多くあります。
それでも、育児休暇を取得すれば、夫婦関係の向上や子どもの成長を感じられるメリットがあるため、積極的な取得を検討してみてください。
参考:2017年度 新入社員 秋の意識調査|公益財団法人 日本生産性本部
男性の育児休暇制度の概要
次は、男性の育児休暇制度の概要について解説します。
- 育児休業給付金
- パパ・ママ育休プラス
- パパ休暇
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
育児休業給付金
育児休業中に収入の減少を不安に感じる人も多いですが、その対策として「育児休業給付金」があります。これは雇用保険の一環で、育休中の生活をサポートするための手当です。
支給額は、休業開始から6か月間は賃金日額の67%、その後は50%に相当する額が支給されます。また、育児休業中は社会保険料の支払いも免除されるため、経済的な負担が軽減される仕組みです。この制度を活用すれば、育児に専念しつつも生活の安定を保てます。
なお、育児休業給付金はいつ受け取れるかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:育児休業給付金はいつ受け取れる?受け取る条件や支給額、手続きの方法まで詳しくご紹介!
パパ・ママ育休プラス
育児休暇を利用する際、夫婦がともに休暇を取得する場合に有利な制度が「パパ・ママ育休プラス」です。この制度では、両親が育児休暇を分担すれば、通常は子どもが1歳になるまでの育休期間を最大1歳2か月まで延長できます。
たとえば、ママが出産後から1年間育休を取得して、その後パパが交代して育休を取得すれば、子どもの成長に合わせて柔軟に育児に関われます。
パパ休暇
「パパ休暇」では、子どもが生まれてから8週間以内に育休を取得して、その期間中に育休を終えるのを条件に、再度育休の取得が認められます。たとえば、産後の妻をサポートするために最初の育休を取得して、その後、妻の職場復帰に合わせて2回目の育休を取得できます。
このように、育児に関与する期間を柔軟に調整できるため、家族全体のサポートに役立つ制度です。
男性が育児休暇を取得しにくいと感じる理由は3つ
次は、男性が育児休暇を取得しにくいと感じる理由について解説します。
- 育児休暇を取得しづらい雰囲気がある
- 業務が忙しく職場の人手が不足している
- 今後のキャリア形成への悪影響を懸念している
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.育児休暇を取得しづらい雰囲気がある
男性が育児休業を取得しづらい背景には、職場のサポート不足や業務の負担が大きい点が挙げられます。業務量が多く、休暇を取ると同僚に迷惑をかけるという懸念があり、結果的に申請を諦めるケースが少なくありません。
また、人手不足の部署や自分しか担当していない業務を抱える男性にとっては、育児休業の取得がさらに難しい状況です。このような課題を解消するためには、職場全体での理解と支援体制の強化が欠かせません。
2.業務が忙しく職場の人手が不足している
日本では慢性的な労働力不足が続いており、中小企業では1人が欠けるだけで業務に大きな影響が出る場合がよくあります。育休は、最長で子どもが2歳になるまでと限られているため、その間の業務をカバーするために新たな人材を確保するのは難しいのが現実です。
このような状況では、ほかの従業員に負担がかかりやすく、結果的に育休を取りたい従業員が申し出をためらう要因になってしまいます。
3.今後のキャリア形成への悪影響を懸念している
育休は、労働者に与えられた正当な権利であり、誰もが安心して利用できる制度です。しかし、現実には育休を取得して昇進や昇給に影響が出たり、復職後に不本意な異動を強いられるケースも見られます。
このような不当な扱いがあるため、育休の申請をためらう男性も少なくありません。しかし、キャリアへの悪影響を懸念する声がある一方で、職場環境の改善や公平な制度運用を定めている企業も増加しています。
男性が育児休暇を取得するためのポイント
次は、男性が育児休暇を取得するためのポイントについて解説します。
- 職場で良好な関係を構築する
- 丁寧な引継ぎを心がける
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
1.職場で良好な関係を構築する
育児休暇は男女を問わず保障された権利ですが、男性が育休を取得することへの理解が進んでいない職場も依然として存在します。職場内での人間関係が十分に築かれていない場合、育休取得への協力を得るのが難しい可能性があります。
このため、日頃から周囲との信頼関係を構築し、協力し合える環境や、安心して育休を申請できる職場づくりを心がけてください。
2.丁寧な引継ぎを心がける
育児休暇を数週間から数か月取得する際には、スムーズな引継ぎが欠かせません。休暇中は業務を同僚や部下に任せる場合が多いため、適切に引継ぎをしないと、同僚に過度な負担をかけてしまいます。
さらに、業務全体に支障をきたす可能性があるため、育休に入る前には、余裕を持って引継ぎの時間を設け、周囲に理解を得ておきましょう。早めに育休取得の意思を伝え、スムーズな準備を進めることが大切です。
男性の育児休暇でよくある3つの質問
最後に、男性の育児休暇でよくある質問について紹介します。
- 質問1.男性の育児休暇が必要な理由は?
- 質問2.育児休暇と育児休業の違いとは?
- 質問3.男性の育休取得に関する政府の目標は?
それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。
質問1.男性の育児休暇が必要な理由は?
出産直後の「産褥期」は、産後の女性の体が回復する大切な期間であり、6〜8週間ほどかかります。この時期、女性は体力が落ちているにもかかわらず、授乳や夜泣きといった育児に加え、家事もこなさなければなりません。
このような負担を1人で抱えると「産後うつ」を引き起こすリスクが高まるため、周囲のサポートが不可欠です。このため、男性が育休を取得すれば、妻の心身を支えるだけでなく、夫婦の関係も良好に保つ助けとなります。
また、父親が育休を通じて赤ちゃんとの時間を過ごすのは、赤ちゃんとの絆を深める大切な機会です。これにより、子育てへの積極的な関与が子どもとの愛着形成にもつながります。
質問2.育児休暇と育児休業の違いとは?
「育児休業」は、育児・介護休業法にもとづく制度であり、通称「育休」と呼ばれています。この制度は、男女問わず労働者が申請すれば取得でき、男性の場合は出産予定日から子どもが1歳になる前日まで利用可能です。
また、「パパ・ママ育休プラス」を利用すれば、育休期間を子どもが1歳2か月まで延長もできます。育休は法的に認められた権利であり、就業規則に明記されていなくても取得できますが、労働者が申請するかは個人の選択に委ねられています。
なお、育児休暇と育児休業の違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:育児休暇と育児休業の違いとは?育児休業の対象者と期間や申請に必要な書類を詳しくご紹介!
質問3.男性の育休取得に関する政府の目標は?
男性の育休取得率に関する政府目標は、2025年までに50%、2030年までに85%に設定されています。当初の目標は、2025年までに30%でしたが、政府が男性の育休取得を推進する意思を示したため、2023年に大幅に引き上げられました。
また、2023年10月には「育休中等業務代替支援コース(仮称)」として、目標達成に向けた支援策も強化されました。この施策は、育休や時短勤務者の業務を引き継ぐ従業員に手当を支給する補助金制度の拡充が目的です。これにより、企業内の育休取得に伴う現実的な問題への対応が進められています。
参考:厚生労働省|男性の育児休業取得促進等に 関する参考資料集
まとめ
本記事では、男性の育児休暇取得に関する現状や育児休暇制度の概要、取得するためのポイントをご紹介しました。
男性の育児休業取得率は、平成17年から比べると増加傾向にありますが、女性に比べると低い結果です。育児休業制度を導入している事業所は大半を占めているものの、男性が積極的にこの制度を利用していないという問題があります。
また、育児休業給付金や夫婦がともに休暇を取得する場合に有利な「パパ・ママ育休プラス」、パパ休暇などの制度も整備されています。しかし、育休を取得しにくい雰囲気や人員不足による職場の忙しさ、キャリアへの影響を感じる声も少なくありません。
このため、職場で育休を取得する際に理解してもらいやすい関係構築や、適切な引継ぎができる職場づくりが大切です。これにより、育児と仕事を両立しやすい環境を整えられます。
なお、次のページでは、誕生月ごとの保活スケジュールや進め方のポイントを解説しています。こちらもぜひ参考にしてみてください。
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