物分かりがよく反抗しない、と聞くと「なんていい子なんだ!」と思う親御さんも多いのではないでしょうか。確かに純粋ないい子も存在しますが、中には周りの顔色をうかがい、自分の意見を押し殺した「いい子症候群」に陥っている子である可能性もあります。
そんな「いい子症候群」ですが、どのような親の子が陥りやすいのでしょうか。本記事では、いい子症候群に見られる特徴や予防方法をご紹介します。
いい子症候群とは?
いい子症候群とは「大人が求める理想の子どもになろう」とする、子どもの心の状態を指します。親が求める「いい子」であろうと、自分の気持ちを抑えたり親や他人の顔色をうかがって行動したりする特徴があります。
「出る釘は打たれる」ということわざからもうかがえるように、日本は協調性が重んじられ、他人に迷惑をかけないことが良しとされる風潮が強い国といえます。そのため、日本人は「いい子症候群」になりやすいといえるかもしれません。
いい子症候群の子どもに見られる5つの特徴
いい子症候群の子どもに見られる特徴には、以下の5つが挙げられます。
- 感情を上手く表現できない
- 他人や親の顔色をうかがいすぎる
- 反抗期がない
- 自分で決断できない
- 自分から助けを求めることができない
ここではそれぞれに分けて解説しますので、見ていきましょう。
特徴1.感情を上手く表現できない
いい子症候群の子どもは、周囲の意向を汲み取りすぎるあまり、自分の感情を押し殺しても周囲の思い通りに振る舞うことを優先する傾向にあります。
そのため本当の自分の気持ちがわかりにくくなり、感情を上手に表現しにくい点が特徴として挙げられます。
特徴2.他人や親の顔色をうかがいすぎる
いい子症候群の子どもは、両親をはじめとした他人の顔色をうかがいすぎる傾向にあります。また周りに積極的に意見や感情を伝えることも少なく受け身な姿勢であることが多いともいえます。
このように周囲へ主体的に働きかけを行うことが少ないことから、指示がないと不安に駆られやすいのも特徴です。
特徴3.反抗期がない
反抗期がない、もしくは短いこともいい子症候群の子どもの特徴です。自分の思いを押し殺し、両親の意向を優先する傾向が強いことから、反抗したいという気持ちすら抱きにくくなっているともいえます。
特徴4.自分で決断できない
いい子症候群の子どもは、自分よりも相手の意向を優先しやすいことから、自ら決断を下すのが苦手な傾向にあります。
「何が食べたい?」といった些細な質問でも、自分の意向を伝えられず返答できない場合も中にはあります。また仮に本当に食べたいものがあったとしても「周りは何が食べたいのだろうか」「何と答えて欲しいのか」などのように考え他者を優先しがちです。
特徴5.自分から助けを求めることができない
自分から助けを求められにくい点も、いい子症候群の子どもの特徴です。
困ったことがあっても「これくらい我慢すればいいや」「自分でなんとかしよう」と、周囲に助けを求めることが苦手な傾向にあります。これは、助けを求めることで周りに迷惑をかけたくない気持ちの表れといえるでしょう。
また自分から困っていると伝える前に、周囲に気づかれるケースもあります。このような場合は周りが先回りしてトラブルを解決するため、自ら問題に対峙し解決する能力が育まれにくいといえます。
子どもがいい子症候群になりやすい親の5つの特徴
子どもがいい子症候群になりやすい親には、以下5つの特徴が見受けられます。
- 過度にルールを作りすぎる
- 子どもの意見を聞かない
- 子どもに完璧を求める
- 親の価値観を押しつける
- 親が先回りしすぎる
ここではそれぞれに分けて解説します。
特徴1.過度にルールを作りすぎる
過度にルールを作りすぎると、子どもがいい子症候群に陥りやすくなります。
しつけの一環として子どもを叱ることはありますが、過度な叱責やルール決めは子どもを縛ることにつながります。親が管理をしすぎると子どもは主体的な行動が取りにくくなり、自分の気持ちを表現できなくなりやすいでしょう。
特徴2.子どもの意見を聞かない
いくら子どものためと思って行動しても、子どもの意見を聞かなければ子どもには独善的に映りやすくなります。
親が先回りして決めるのではなく、日頃から子どもと十分なコミュニケーションを取り、子どもの意見に耳を傾けましょう。
特徴3.子どもに完璧を求める
子どもに完璧を求め過ぎるのも考えものです。子どもが失敗したときに過度に責める・がっかりすると、子どもが萎縮しやすくなります。
その結果言葉にしなくても、子どもは親の気持ちを敏感に察知するようになるでしょう。
親として子どもを「立派な人に育てたい」という責任感から生じているものだとしても、少しくらいの失敗であれば受け流すことも重要です。
特徴4.親の価値観を押しつける
子どもが何か行動しようとする際、親はつい自分の価値観を押し付けてしまいがちです。「まだ幼いから親が判断した方が良いだろう」と、子どもの決断を親が決める家庭も少なくありません。
しかしすべてを親が決めていると、子どもの気持ちが無視され、無力感を抱きやすくなります。そのような状態が続くと、子どもは「親の言うことに従ってさえいればいい」と、自ら考えたり決断したりすることができにくくなります。
特徴5.親が先回りしすぎる
子どもには失敗や間違いをさせたくないと、親が先回りして子どもの行動を決断・制御することがあります。子どものためを思う行動であっても、先回りばかりした子育てはよくありません。
親から見ると明らかな失敗や間違った判断だとしても、自ら決断して行動することで子どもはさまざまな力を培っていきます。危険や周囲へ迷惑をかける行動以外は、先回りしたい気持ちを抑えて見守ってあげましょう。
いい子症候群を防ぐために親ができる5つのこと
いい子症候群を防ぐために親ができることには、以下の5つが挙げられます。
- 子ども自身に考えさせる
- 結果ではなくプロセスを褒めてあげる
- 親が喜怒哀楽を表現する
- 子どもの選択を否定しない
- 負の感情も受け止めてあげる
子どもがいい子症候群に陥らないためには、親子の密なコミュニケーションを心がけ、双方が歩み寄れるように意識しましょう。
1.子ども自身に考えさせる
ルールやマナーを一方的に教えるだけでなく、子ども自身に考えさせるように意識しましょう。子ども自らルールやマナーがなぜあるのか考えることで、納得した行動を取りやすくなります。
守れなかったからといってすぐに叱るのではなく、なぜそのような行動を取ったのか、子どもに問いかけてあげてみてください。
2.結果ではなくプロセスを褒めてあげる
子どもが何かを達成したり、できるようになったりした時、結果だけでなく、プロセスにも注目して褒めるよう意識しましょう。
結果だけを褒めると、子どもが結果を出したときだけ褒める習慣がつきやすくなります。そうすると子どもは目先の結果だけにこだわりやすくなるでしょう。そのような罠に陥らないためにも、目標に向かって取り組む姿勢やプロセスを褒めることを意識してみてください。
3.親が喜怒哀楽を表現する
子どもは親の感情表現を見て、情緒を育みます。そのため、親が素直に喜怒哀楽を子どもに表現することによって、子どもも自然と感情を表に出せるようになるでしょう。
「子どものよき手本になろう」と、感情を必要以上にコントロールしてしまうと、不自然さが目立ち逆効果になることがあります。まずは親が自然体で振る舞うことが大切です。
4.子どもの選択を否定しない
子どもの選択はいきなり否定せず、まずは一旦受け入れることも大切です。子どもが自分の望む選択をしなかったとしても、まずは否定せず受け入れることで、子どもは自分が尊重されたと感じやすくなります。
逆に子どもに自分の意見を押し付けようとすると、否定されたと感じる可能性が高いでしょう。現実的には子どもが行う選択の全てを受け入れることは難しくても、子どもの意見を尊重するために頭ごなしの否定は控えましょう。
5.負の感情も受け止めてあげる
明るい感情は共感しやすいものですが、負の感情もしっかりと受け止めてあげることが重要です。
真面目な子どもほど相手の反応次第で負の感情を押し殺しやすく、自分の中に溜め込む傾向にあります。子どもが自分の感情や気持ちを素直に伝えられるよう、どんな感情でも受け止めることを意識しましょう。
まとめ
ここまでいい子症候群の概要やいい子症候群の子ども・親に見られる特徴、予防するためにできることについて解説しました。いい子症候群は周囲の顔色をうかがうあまり、自分の気持ちや考えを押し殺しやすい傾向にあります。
親が良かれと思って先回りして行なっている行動が、実は子どもの挑戦や意欲を削いでいるかもしれません。親は子どもに対して意見したくなる気持ちを堪えて、大らかな目で見守ってあげるとよいでしょう。
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