非認知能力はコミュニケーション力や自己肯定感、忍耐力といった、生きていくために必要な能力を指します。最近は非認知能力が、IQや学力のような認知能力向上に影響があるとされ、非認知能力に注目が集まっています。
本記事では、非認知能力の基礎知識から伸ばし方や子どもの非認知能力を育むために親ができることを解説します。
非認知能力とは?
非認知能力とはテストや診断などで数値を計測できる能力ではなく、コミュニケーションや協調性など、生きていくために必要な能力全般を指しています。代表的な非認知能力には、以下のようなものが挙げられます。
協調性、コミュニケーション力、主体性、自己管理能力、自己肯定感、実行力 |
認知能力と非認知能力との違い
認知能力とはIQといった、数値化できる能力を指します。認知能力と非認知能力の違いは以下の通りです。
- 認知能力:数値化できる能力(学力・IQなど)
- 非認知能力:数値化できない能力(コミュニケーション力・忍耐力など)
「全国学力・学習状況調査」によると、学習意欲が高い子どもの方が正答率が高い傾向にあるとのことです。
普段の学習風景でも、授業に意欲的であったり、自分の発言に自信を持っている子どもは学力が高い傾向にあります。
このように学習意欲といった非認知能力の有無は、認知能力の向上に影響があると言えるでしょう。
世界的に非認知能力が注目される背景
世界的に非認知能力が注目されるようになったきっかけは、1960年代にアメリカで実施された「ペリー就学前プロジェクト」の存在があります。
「ペリー就学前プロジェクト」とは、経済的に恵まれない3〜4歳のアフリカ系アメリカ人を対象にした教育プログラムの総称です。プロジェクトでは対象児童における学習状況の把握だけでなく、その後40年にわたる追跡調査が実施されました。
調査からプログラムを受けた子どもたちは、受けていない子どもたちと比べて認知能力に差が見られないものの、学習成績や安定した社会生活を送っていることが判明しました。
こうした「ペリー就学前プロジェクト」の調査結果から、非認知能力が社会生活を営む上で基盤となる能力と考えられるようになりました。
参考:「幼児教育」が人生を変える、これだけの証拠 | 子育て | 東洋経済オンライン
非認知能力の種類
非認知能力は明確な定義が存在せず、それぞれの研究機関によってさまざまな定義付けが行われています。代表的な非認知能力は以下の通りです。
- 自己認識:やり抜く力や自己肯定感
- 意欲:集中力や学習志向性
- 忍耐力:粘り強く取り組む力
- セルフコントロール:理性や自制心
- メタ認知:判断力や客観的思考力
- 社会的能力:リーダーシップや協調性
非認知能力を育てるための4つのポイント
非認知能力を育てるためには、以下4つのポイントが挙げられます。
- 土台は3歳までに作られる
- 遊びを通して育てる
- 周囲との関わりを通じて育てる
- 好きなことを通じて育てる
非認知能力は急激に伸びる力ではなく、日常生活の中で少しずつ培われる能力です。ここではそれぞれに分けて解説します。
ポイント1.土台は3歳までに作られる
非認知能力の土台は3歳までに作られるとされています。
幼い頃に非認知能力の土台を身につけておけば、その後の発達にも良い影響が持続するといわれており、できるだけ早く非認知能力を伸ばすように意識して接するとよいでしょう。
3歳までに非認知能力の土台が作られると言われているものの、経済産業研究所は10代後半でも非認知能力を育てることは可能と主張しています。
すでに一定の年齢に達した子どもだった場合でも遅すぎることはないため、気づいたときから非認知能力を伸ばすように意識してみてください。
ポイント2.遊びを通して育てる
小さな子どもの非認知能力は「遊びを通して育つ」といわれています。特に幼児期には、外遊びを積極的に行うよう意識しましょう。
文部科学省の幼児運動指針でも「体を動かす遊びを通して協調性やコミュニケーション能力が向上される」と、外遊びの重要性が示されています。
子どもが外遊びを通じて非認知能力を伸ばすために、親が意識したいポイントは以下の3つです。
- 見守り
- 安全な環境
- 子どもの意志を妨げない
基本的にはあれこれと指示はせず、子どもの自主性に任せます。しかし子どもが事故や怪我をしないよう見守りつつ、安全な環境を整えてみてください。
ポイント3.周囲との関わりを通じて育てる
非認知能力は周囲との関わりを通じて育まれる一方、認知能力は継続的な学習によって高まるとされる一方、非認知能力は周囲との関わりを通じて育まれる能力です。
非認知能力は自分が作ったものを見せ合ったり、意見がぶつかったときに話し合いを行ったりと、周囲の人との関わりから育まれる場合が多いため、人との関わりも大切にすると良いでしょう。
ポイント4.好きなことを通じて育てる
子どもの興味は、次々と移り変わるものです。親としてはひとつの遊びに集中してもらいたい気持ちがあるかもしれませんが、非認知能力は好きなことを通じて育まれやすいといえます。
子どもの意志を尊重して、自由に遊ばせてあげることで、自然と非認知能力が育まれるでしょう。
非認知能力を伸ばすために親ができる4つのこと
非認知能力を伸ばすために、親は以下の4つを意識しましょう。
- どんな時でも愛情をもって接する
- 子どもの気持ちに寄り添う
- 子どもの好奇心を優先する
- 日常的に自信を持たせてあげるように意識するc
いずれも子どもの感情を優先して、親の感情を押し付けないように意識することが重要です。
1.どんな時でも愛情をもって接する
子どもは安心感や信頼感を得ることで、自己肯定感やコミュニケーションといった非認知能力が身につきます。
子どもの状況に左右されず、どんな時でも愛情をもって接するように心がけましょう。具体的には以下のような接し方が望ましいとされています。
- 悲しんでいたら寄り添う
- 頭ごなしに叱らず、まずは言い分をしっかり聞く
- サポートすると伝える
2.子どもの気持ちに寄り添う
子どもが嬉しがっている時は一緒に喜び、悲しがっている時は一緒に悲しむように、子どもの気持ちに寄り添いましょう。
子どもは自分の気持ちに共感してもらえたとわかることで、気持ちが切り替えられたり、前向きに行動したりできるようになります。
3.子どもの好奇心を優先する
遊びや勉強では、子どもの好奇心を優先しましょう。誰でも好きなことや得意分野では、やる気に満ち溢れ、根気強く継続して取り組めるものです。
子どもの好奇心を優先することで、意欲的に取り組む力や工夫をしながら物事に挑戦する力が培えられます。
子どもが危ない目に遭わないよう見守りつつ、できる限り子どもの好きなようにやらせてあげると良いでしょう。
4.日常的に自信を持たせてあげるように意識する
日常的に子どもの自信を育む意識で接すると良いでしょう。自信があることは自分から挑戦したり工夫したりと、意欲的に取り組みやすいため、より確固たる自信を持ちやすくなります。
また自信がある心の状態は余裕を生み、周囲とのコミュニケーションが円滑になりやすい効果も期待できます。子どもに自信を持たせる際、意識したい点は以下の通りです。
- 存在を肯定する
- 他の子と比べない
- 結果だけでなく努力を褒める
非認知能力を鍛える遊び4選
非認知能力を鍛える遊びには以下のようなものがあります。
- 読み聞かせ
- 外遊びや水遊び
- リトミック
- 大人を手伝う
ここではそれぞれの内容や効果について解説します。
1.読み聞かせ
子どもは読み聞かせを通じて、想像力を働かせたり、登場するキャラクターに共感したりと、人とのつながりを意識できるようになると言われています。そのため絵本の読み聞かせは、非認知能力の向上に良い影響が期待できます。
絵本の読み聞かせの最中に、子どもと会話をするとより効果的です。「なんでこうなったのかな?」と問いかけたり、「今日公園で見たのと同じだね」など現実と結びつけたりすると、より非認知能力の向上が期待できるでしょう。
小中学生になっても読書習慣があると想像力が高まりやすいため、成長した子どもの非認知能力の向上にも有効です。
絵本が子どもに与える影響を詳しく知りたい方は下記の記事が参考になります。選び方のポイントや子どもが喜ぶ読み聞かせのポイントも紹介していますので、ぜひご覧ください。
関連記事:子どもにとっての絵本とは?与える影響から選び方のポイントまでをご紹介します
2.外遊びや水遊び
外遊びや水遊びといった体を動かすことは、体力の向上以外にも非認知能力を鍛えるのに有効です。
スポーツ庁が行った調査では、幼い頃に外遊びをたくさんした子どもは、小学生になっても体力テストの得点が高い傾向にあるとの結果が出ています。年齢が高まり中高生になると、幼少期から運動習慣のある子どもは達成意欲が高いとのデータも出ています。
このように幼い頃から外遊び・水遊びを通じて運動習慣を身に付けることで、非認知能力の向上が期待できるでしょう。
3.リトミック
リトミックとは音楽と触れ合いながら、体・感覚・知覚を伸ばす教育方法です。リトミックも子どもの非認知能力向上が期待できます。
リトミックは年齢ごとにプログラムが組まれることが一般的で、0〜5歳の発達に合わせた音楽を用いて、子どもの心に深く働きかけます。リトミックにより基礎的な音楽の力を育めるだけでなく、心・力・性に良い相互作用が期待できます。
参考:リトミックとは
下記の記事でリトミック保育について詳しく紹介しています。リトミック保育のメリットや年齢別で行う目的など、ほかにも楽しむためのポイントもありますので、気になる方はぜひご覧ください。
関連記事:リトミック保育とは?メリットや保育園で行う目的、子どもが楽しむためのポイントを解説します
4.大人を手伝う
ちょっとした家事や買い物を手伝うといった大人を手伝う経験も、社会で生き抜くための力を伸ばすといわれています。手伝う経験を通じて、人の役に立つ自己有用感が育めるとされています。
子どもは大人を手伝うことによって、見守られている・受け止められているとの安心感が得られます。最初はできそうな簡単なお願いから頼んでみるとよいでしょう。
なお、子供の運動能力を伸ばす方法について紹介します。子供の運動が著しく成長する時期を指す「ゴールデンエイジ」についても解説します。
非認知能力に関するよくある3つの質問
非認知能力に関してよくある質問を3つ、厳選してご紹介します。
質問1.非認知能力を伸ばすおすすめの習い事はありますか?
非認知能力を伸ばすためのおすすめの習い事は下記のとおりです。
- ダンス
- 合気道
- 絵画・工作
- プログラミング
- 水泳
- 楽器・リトミック
- 総合型スポーツ
- 料理
- 自然体験・ボーイスカウト
子どもの非認知能力を伸ばすためには、子どもの興味のあることや好きなことから、優先的に習い事を選ぶのがポイントです。
また頭だけではなく、手足をたくさん使う習い事もおすすめです。子どものペースで成長でき、長く続けられるものを選びましょう。
子どもの習い事をいつから始めるべきか悩んでいる方は、下記の記事が参考になります。年齢別で人気の習い事を紹介していますので、ぜひご覧ください。
関連記事:こどもの習い事はいくつから?メリットや選び方のポイント、始める前に知っておきたいことをご紹介
質問2.習い事を2歳から始めるのは早いですか?
2歳から習い事を始めると、感受性が豊かになったり、コミュニケーション能力が培われたりとさまざまなメリットがあります。
しかし身体能力はまだ完全に発達していないため、活動量の多い習い事はまだ早い時期といえます。体への負担が少ない習い事から始めると良いでしょう。
2歳から習い事を始めるメリットやデメリットについて詳しく知りたい方は、下記の記事が参考になります。2歳児におすすめの習い事も紹介していますので、ぜひ一度、ご覧ください。
関連記事:2歳から習い事は早い?メリットやデメリット、おすすめの習い事5選を紹介!
質問3.子供の自立心はどのように育てれば良いですか?
子どもの自立心を育てるためのポイントは以下のとおりです。
- 子供の意思を尊重する
- 子供に選択させる
- 子供を大人と対等に扱う
子どもの自立心を育てるためには、意思を尊重して、子供の自発性を育むことが大切です。失敗をしても、それは子どもの成長にとって大切な通過点になります。子どもと程よい距離感を保ちながら、見守ってあげましょう。
下記の記事で、子どもの自立心を育てるための注意点や具体的な方法を紹介していますので、参考にしてください。
関連記事:子供の「自立心」はどう育てる?具体的な方法について詳しく解説します!
まとめ
自己肯定感や協調性といった数値で測れない非認知能力は、多様性が求められる現代において今後ますます注目されるであろう能力です。
非認知能力を伸ばすには、毎日子どもと触れ合うなかで少しずつ取り組む必要があります。ぜひこの記事で解説したことを参考にして、子どもの非認知能力を育んでいきましょう。
なお、子育てに悩みはつきません。そんなときは子育て本からヒントを得るのもおすすめです。次のページでは、子育て本のトレンドや選ぶときのポイント、おすすめ書籍をご紹介しています。
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