「認可保育園に落ちてしまった…」や「会社近くの保育所に預けたい…」といったように悩むパパママは、自分が働いている会社が企業主導型保育園と連携契約を結んでいないか確認してみてはいかがでしょうか。
この記事では、企業主導型保育園の概要から、企業主導型保育園に通わせるメリット・デメリットを解説します。
企業主導型保育園とは?
企業主導型保育園とは、企業が自社従業員向けに設置する保育園です。企業主導型保育事業として、平成28年に内閣府が始めた企業向け助成制度のひとつです。
企業が従業員の勤務時間や働き方に合わせた保育サービスを提供することが目的に挙げられています。主な目的は、以下のとおりです。
- 従業員に柔軟な保育サービスを提供する
- 待機児童の解消
ご紹介したように企業主導型保育事業は、平成28年度から採用されている事業です。政府が提唱した「子育て安心プラン」の目標達成のために、開始されました。全国の設立数を見ると、平成28年度から令和2年度まで3,827施設が新設されています。
企業主導型保育園がつくられた背景
企業主導型保育園が設立された背景は、働く親の増加に伴う保育ニーズの高まりと、保育園の待機児童問題の解消が求められたことにあります。これらの問題を解決するため、企業が主導して保育園を設立し運営するという新たな形が導入されました。
企業主導型保育園は、職場近くで子どもを預けられるため、働く親にとっては大きなメリットです。仕事と子育ての両立を支えるという観点から、企業の社会的責任を果たすとともに、女性や育児中の従業員の働きやすい環境を提供することにも繋がります。
一方で、企業も従業員の定着率向上やブランドイメージの向上といった利点があります。また、地域社会とのつながりを深め、地域貢献にも寄与することが可能です。
以上のような多面的なメリットから、企業主導型保育園の設立が推進されてきました。
企業主導型保育園の4つの特徴
企業主導型保育園の特徴をご紹介します。主に次の4つです。
- 従業員の多様な働き方に対応できる
- 保育料を安く設定できる
- 複数の企業で共同設置や共同利用が可能である
- 地域の子どもも利用できる
項目ごとに詳しく見ていきましょう。
1.従業員の多様な働き方に対応できる
企業主導型保育園における最大の特徴は、企業のニーズに合わせた柔軟な保育の提供が可能であることです。具体的には、残業やシフト勤務、週末出勤などによる不規則な労働時間に適応できるよう、延長保育や休日保育を行い、早朝や深夜の時間帯でも子どもたちを預かることができます。
企業主導型保育園では、従業員が安心して働き続けられる環境を整えるため、企業の営業時間や従業員の就業形態を考慮に入れた保育プログラムを設計します。例えば、夜勤や早朝勤務する親のために24時間型の保育を提供する企業もあります。
また、仕事と家庭の両立をサポートすることで、育児中の従業員の離職を防ぎ、長期的な人材確保にも寄与します。これは、働き方改革が進む現代において、企業にとって大きなメリットといえるでしょう。
2.保育料を安く設定できる
企業主導型保育園の特徴のひとつに、保育料を安く設定できる点が挙げられます。これは、企業が主体となって運営するため、経営費用を軽減し、その結果を保育料に反映できるからです。
一部の企業主導型保育園では、企業の規模により、従業員の子どもに対しては保育料無料や割引が行われる場合もあります。これにより、保育料負担をさらに軽減し、働きながら子育てする従業員を支援しています。
3.複数の企業で共同設置や共同利用が可能である
複数の企業で共同設置や共同利用が可能な点も、企業主導型保育園の大きな魅力のひとつです。
この制度により、単独で保育園を運営するにはコストや手間がかかり導入が難しい企業でも、他の企業と手を組むことで負担を軽減し、自社の従業員に対する福利厚生を充実させることが可能になります。
例えば、同じビルに入居している複数の企業が共同で保育園を設置するケースもあります。これにより、出産後も働き続けたいという従業員のニーズに応えるとともに、保育園への送迎時間を大幅に短縮することが可能です。また、これは従業員だけでなく地域社会にもメリットをもたらしています。
企業主導型保育園は、企業の社会貢献活動として、また働く従業員を支える福利厚生として高く評価されているのです。
4.地域の子どもも利用できる
企業主導型保育園は、基本的にその企業で働く従業員の子どもを対象として設立されていますが、必ずしもすべての受け入れ対象者が従業員の子どもに限定というわけではありません。
つまり、企業主導型保育園の受け入れ対象者は、企業の従業員の子どもだけでなく、地域の子どもたちも含まれます。地域住民と企業が相互に関わり合い、地域コミュニティの一部として存在することで、地域ぐるみで子育てを支える環境を創出する役割を果たしているのです。
ただし、地域の子どもが利用する場合、企業主導型保育園は基本的に企業の従業員を優先とするため、入園の可否や入園条件はそれぞれの企業や保育園によって異なります。具体的な入園手続きなどは保育園や企業に問い合わせが必要です。
企業主導型保育園とほかの保育園の違い
企業主導型保育園とほかの保育園の違いは以下の通りです。
企業主導型保育園 | 認可保育園 | 認可外保育園 | |
目的 | 働き方に対応した保育サービスの提供 | 保育が必要な子ども向け | 自由に設置可能 |
監査 | 内閣府 | 厚生労働省 | 厚生労働省 |
運営主体 | 児童育成協会 | 市区町村 | 社会福祉法人など |
対象園児 | 従業員枠・地域枠 | 2・3号認定 | 施設の基準による |
ここではそれぞれに分けて解説します。
認可保育園
認可保育園は、自治体から認可を受けている保育園で、就労や家庭の事情など家庭での保育が難しい子どもを保育する施設です。
設置基準や要件が厳しく定められています。施設を運営するには都道府県知事の認定が必要で、保育士の数・保育人数あたりの広さ・園庭の設置などの基準を満たさなければなりません。
保育料は自治体ごとに定められており、世帯年収に応じて金額が異なります。入園を希望する際、自治体へ申請し、保育の必要性から入園可否が判断されます。
認可保育園については、次のページでも詳しく解説しています。こちらも参考にしてみてください。
関連記事:認可保育園とは?保育料を決める要素やメリット、デメリットを紹介! – コカラ
認可外保育園
認可外保育園は、設置基準や要件が認可保育園に比べると緩やかな保育園です。要綱に基づく設置のため、認可保育園では提供できない24時間保育など、柔軟なサービスを提供しています。
補助金が交付されず運営資金は経営元がすべて拠出しているため、保育料は高額な場合がほとんどです。認可保育園と異なり、入園を希望する場合は、希望する認可外保育園へ直接申し込みます。
認可外保育園については、次のページでも詳しく解説しています。こちらも参考にしてみてください。
関連記事:認可外保育園とは?認可保育園との違いやメリット、デメリットを徹底解説 – コカラ
企業主導型保育園における4つのメリット
企業主導型保育園のメリットには、以下の4つが挙げられます。
- 働き方に合わせた保育を提供している
- 送迎しやすい
- 保育審査がない
- 特色のある保育メニューを取り入れてる
従業員の働きやすさに寄り添った保育サービスの提供を受けられる点が企業主導型保育園のメリットです。ここではそれぞれに分けて解説します。
1.働き方に合わせた保育を提供している
企業主導型保育園は勤務時間や就労形態など、働き方に合わせた保育サービスを提供しています。
また発表会といった行事は、認可保育園の場合、平日に開催されることも考えられます。しかし企業主導型保育園では、親の休みに合わせて計画される場合がほとんどです。
2.送迎しやすい
企業主導型保育園は勤務先から近い場所に施設がある場合がほとんどのため、送迎しやすい点もメリットに挙げられます。ほかの保育施設であれば、一旦勤務先と反対方向に子どもを送ってから仕事へ向かう人もいるでしょう。
子どもの送迎は毎日発生するため、手間がかかると大変です。送迎に手間がかかると、寝不足や慢性疲労に陥る可能性も考えられます。
その点、送迎にかかる時間を短縮できると子どもと関わる時間を確保できるほか、育児と仕事を両立しやすくなるでしょう。
3.保育審査がない
子どもを認可保育園に預ける場合、自治体から認定を受ける必要があります。あらかじめ公表されている基準にしたがって保育の必要性が判断され、優先順位が高い順番に入園が決まります。
そのため決定通知が届くまで、入園できるかわかりません。もし入園できないとなると、最悪の場合は退職を検討せざるを得ない可能性もあります。
しかし、企業主導型保育園の企業枠の場合、自治体の審査を受ける必要がなく、入園のハードルが一気に低くなります。
4.特色のある保育メニューを取り入れてる
企業主導型保育園では、英語やリトミック、バレエなど、独自の保育メニューを取り入れてる場合があります。
認可保育園とは異なり、保護者と施設が直接契約を結ぶ形態となっているため、独自性が高いサービスを提供している施設が多い傾向にあります。どのような保育メニューを提供しているか確認してみてください。
企業主導型保育園における3つのデメリット
企業主導型保育園には、以下のような3つのデメリットもあります。
- 自治体に問い合わせても情報がない
- 閉鎖するリスクがある
- 保育の質が担保されていない
ここではそれぞれに分けて解説しますので、見ていきましょう。
1.自治体に問い合わせても情報がない
認定保育園であれば、自治体に問い合わせれば保育方針といった情報を事前にチェックできます。
しかし、企業主導型保育園は運営年数が短い傾向にあり、情報があまり公開されていないことが多い傾向にあります。そのため自治体に問い合わせても、あまり情報が得られない可能性があります。
2.閉鎖するリスクがある
企業主導型保育園は平成28年度に制度が開始されたばかりであることから、監査体制が確立されておらず、未だ発展途上の事業であるともいえます。
加えて認定保育園よりも設立のハードルが低く、一時期企業主導型保育園が乱立した時期もありました。
こうした園の中には未熟な運営体制により、国から指導を受けて閉園したケースもあります。このように、閉鎖するリスクがあることはデメリットだといえるでしょう。
3.保育の質にバラツキがある
企業主導型保育園は、認可外保育施設に位置付けられているため、認可保育園ほど明確な基準に照らされておらず、保育の質にバラツキがあることもデメリットだといえます。
利用を検討する場合は、運営主体や事業年数などをチェックすることをおすすめします。
企業主導型保育園に関するよくある5つの質問
企業主導型保育園に関するよくある質問には、以下の5つが挙げられます。
- 質問1.企業主導型保育園を利用するにはどうすればよいですか?
- 質問2.企業主導型保育園の保育料が安いのはなぜですか?
- 質問3.企業主導型保育園の将来性は?
- 質問4.企業主導型保育園に入園するにはどのような手続きが必要ですか?
- 質問5.事業所内保育所との違いは何ですか?
ここではそれぞれに分けて解説しますので、詳しくみていきましょう。
質問1.企業主導型保育園を利用するにはどうすればよいですか?
企業主導型保育園を利用するには、勤務先が保育園を設置している必要があります。あるいは利用契約を交わしている園であれば、企業枠で入園可能です。
しかし地域枠に関しては、当該地域に住んでいれば自動的に入園できるわけではありません。企業枠・地域枠のいずれも、就労要件等を満たしており、保育の必要性を自治体から認定される必要があります。
また、企業主導型保育園へ入園を希望する際、保育園と利用者は直接契約を結びます。その際、勤務先の就労証明書を保育園に提出しなければなりません。
さらに、就労以外で保育園を利用しなければならない理由がある場合は、居住地の市町村から保育認定(2号・3号)を受ける必要があります。
質問2.企業主導型保育園の保育料が安いのはなぜですか?
企業主導型保育園の保育料が安く設定されているのは、国から運営費の助成を受けていることが理由です。そのため、一般的な認可外保育園よりも安い費用で通うことができます。
一般的な認可外保育園は、国からの助成が受けられないため、保育料は認可保育園と比較すると高額になる傾向にあります。
一方企業主導型保育園は国からの助成金に加え、企業が福利厚生を目的として保育料の一部を負担している場合が多く、安く設定しているところがたくさんあります。これは、子育て世帯にとってうれしいメリットだといえます。
質問3.企業主導型保育園の将来性は?
企業主導型保育園は、今後も数が増えていくことが見込まれています。企業にとっても従業員の働き方に合わせた柔軟な保育サービスを提供できるため、今後も需要が高まると予想できるでしょう。
ただし都市部においては、土地の確保や近隣住民の反対に遭う可能性が高いなどの懸念が多いことから、施設数が伸び悩んでいる傾向にあります。
質問4.企業主導型保育園に入園するにはどのような手続きが必要ですか?
企業主導型保育園は、保護者と園が直接契約を結びます。申し込み方法は、企業枠・地域枠ごとに異なり、違いについては以下の通りです。
- 企業枠:勤務先と連携企業契約を交わす
- 地域枠:勤務先の就労証明書もしくは自治体から保育認定を受け、園へ提出する
地域枠で利用する場合、認可外保育園でありながら認可保育園並の基準が設けられています。
質問5.事業所内保育所との違いは何ですか?
企業主導型保育園と事業所内保育所の違いは、自治体からの許可の有無が挙げられます。事業所内保育所は認可保育所となるため、自治体の認可が必要です。
一方の企業主導型保育園は、認可外保育施設に該当することとなり、自治体の認可は必要ありません。企業主導型保育園は認可外保育施設となるため、保護者のニーズに沿った自由度の高い保育サービスが提供されている傾向が高いです。
まとめ
ここまで企業主導型保育園の概要やメリット・デメリットを解説しました。認可保育園では地域によって競争が激しく、保育の必要性が低いと判断されれば入園できない可能性があります。
その一方で企業主導型保育園は、自治体への申請なしに入園できる点や、柔軟な働き方に対応している園が多い点から、メリットが豊富な保育形態です。企業主導型保育園のポイントを理解し、利用を検討してみてください。
なお、次のページでは、子育てと仕事を両立させる5つのポイントを紹介しています。
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